COLUMN
コラム
運行管理業務の一元化は可能か?
国交省実証実験と「15の業務」から検証する現実解
国土交通省は「自動車運送事業における運行管理の高度化」に向け、運行管理業務の一元化に関する実証実験を継続的に進めています。 目的は、1人の運行管理者が複数の営業所を管理できるようにすることで、 運行管理者不足への対応と業務高度化を同時に進めること。 しかし現場からは「そもそも運行管理者の仕事は多すぎる、1人で複数拠点なんて物理的に無理だ」という声が絶えません。
本コラムでは、運行管理者が日常的にこなしている15の業務を一つひとつ分解し、どの業務が一元化可能で、どの業務が現場に残すべきかを検証します。 結論を先に言えば——デジタコ・IT点呼・営業所間の情報共有システムが揃えば、中小規模の運送会社でも運行管理の一元化は十分可能。ただし前提となるIT基盤がなければ絵に描いた餅です。 この記事では「どのIT基盤があれば、どこまで一元化できるか」を具体的に示します。
数字で見る、運行管理者の仕事量
「1人で複数営業所を管理」を議論する前に、まず運行管理者1人が今こなしている仕事の量を数字で押さえます。
15+
運行管理者の主要業務項目
点呼から事故対応まで、法令・告示で定められた業務は15を超える
14h
繁忙期の実働時間
早朝点呼(4時台〜)から夜間点呼(22時台〜)まで拘束時間が長い
38項目
運行管理規程の管理項目
国交省告示に基づき運送事業者が定める運行管理規程の項目数
12項目
運輸安全マネジメント
輸送の安全を確保するための12の取組項目を毎年実施・報告
EXPERIMENT
国交省の一元化実証実験とは?
国土交通省は「自動車運送事業における運行管理の高度化」を検討する有識者会議を設置し、 2023年度以降、継続的に運行管理業務の一元化に関する実証実験を実施しています。 自動点呼・遠隔点呼・事業者間遠隔点呼の制度化は、この実証実験の一部です。
実証実験の主な狙いは次の3点です:
- ・運行管理者不足への対応— 有資格者の高齢化と地方での担い手不足を、拠点集約と遠隔運用で補う
- ・運行管理の高度化— 熟練管理者の知見を複数営業所に展開し、安全品質のバラつきを解消する
- ・2024年問題への対応— 改善基準告示の厳格化で管理業務が増える中、効率化で対応する
一方、実証実験で浮かび上がっている論点は「どこまでが一元化可能で、どこからが営業所に人を置くべきか」という線引きです。 点呼だけなら遠隔で完結しますが、事故対応・健康確認・現場指導まで含めて1人で何拠点見られるのか—— 現場の実情を理解しないままルール化すると、安全が損なわれるリスクがあります。
そこで次のセクションからは、 運行管理者が実際にこなしている業務を「1日のタイムライン」と「15の主要業務」の2つの角度から分解し、 どこが一元化可能かを具体的に検証します。
DAILY
運行管理者の1日(繁忙期イメージ)
04:30
早朝点呼開始
長距離便ドライバーの乗務前点呼。アルコール検知・健康状態確認・運行指示
06:00
配車調整・日報確認
前日の運転日報・デジタコデータを確認、遅延・事故の有無をチェック
09:00
事務業務
運行指示書発行・運転者台帳更新・診断予約・指導教育資料の作成
11:00
ドライバー指導
初任運転者・適齢運転者への個別指導、事故惹起者教育
13:00
デジタコ・ドラレコ分析
速度超過・急操作のチェック、該当者への個別指導
15:00
安全会議・資料作成
月例安全会議の準備、運輸安全マネジメント12項目の記録整備
17:00
夕方点呼
日勤ドライバーの乗務後点呼。走行距離・異常有無を確認
20:00
夜間点呼
長距離便・夜間便のドライバー対応。事業者間遠隔点呼で集約する場合もこの時間帯
22:00〜
オンコール対応
事故・故障時の初動対応、緊急連絡の受付
※ 上記は繁忙期の一例です。実際は配車・荷主対応・採用関連業務が随時割り込み、 1日は14時間を超えることも珍しくありません。 この仕事量を「他営業所分」まで上乗せするのが一元化の議論です。
15 DUTIES
運行管理者の主要15業務
運行管理者法定講習のテキストや実務経験から、 運行管理者が日常的に関わる業務を15項目に整理しました。 各業務ごとに「一元化の可能性」をタグで示しています。
拘束時間の把握
改善基準告示対応。デジタコ・勤怠システムで自動集計すれば一元管理可能
ドライバーに合わせた指導教育資料作成
テンプレート化+個別データ反映で遠隔地からも作成可能
運行指示書の発行
システム化されていればクラウドから発行・配信が可能
運行管理規程 38項目の管理
文書・記録管理なのでクラウド化で完全一元化
点呼(乗務前・乗務後・中間)
IT点呼・遠隔点呼・事業者間遠隔点呼で一元化の代表例
運輸安全マネジメント 12項目の資料作成
事務作業なので拠点を問わず対応可能
初任・一般・適齢診断の予約
完全に事務作業、遠隔から実施可能
初任・適齢ドライバーの指導教育
講義部分はオンライン化可能。実車指導は現場対応が必要
デジタコ・ドラレコのデータ確認
クラウド連携できていれば拠点を問わず分析可能
乗務記録・運転日報の確認
電子化されていれば遠隔から承認・フィードバック可能
健康状態の確認・健診管理
日々の顔色・声色の確認は対面が基本。ただし記録管理は一元化可
運転者台帳の整備
完全にデータ管理、クラウドで一元化が最も相性良い業務
アルコール検知器の校正・点検記録
機器の物理点検は現場、記録管理は一元化可
事故発生時の初動対応
現場急行・ドライバー対応・警察対応は現地拠点でしか対応不可
巡回指導・監査対応・Gマーク対応
書類準備・データ提出は一元化可。現地立会いは拠点ごとに必要
15業務を「一元化の可能性」で分類する
15業務のうち、どれが本当に一元化できるのか。 現場対応必須の業務を除けば、実は8割以上がIT基盤で集約可能です。
完全一元化可
5 / 15 業務
IT基盤さえあれば遠隔地から1箇所で対応できる業務
- ・05. 点呼
- ・07. 各種診断予約
- ・09. デジタコ・ドラレコ確認
- ・10. 乗務記録確認
- ・12. 運転者台帳整備
一元化可(IT化前提)
5 / 15 業務
システム化・ペーパーレス化が進んでいれば一元化できる事務業務
- ・01. 拘束時間把握
- ・02. 指導教育資料作成
- ・03. 運行指示書発行
- ・04. 38項目管理
- ・06. 安全12項目資料
部分一元化
3 / 15 業務
記録管理や事務処理は一元化可能、現場対応だけ拠点側に残る業務
- ・08. 初任・適齢指導
- ・13. アル検校正・点検
- ・15. 巡回指導・監査対応
現場必須
2 / 15 業務
対面性・即応性が不可欠で、拠点に人を置かざるを得ない業務
- ・11. 健康状態確認
- ・14. 事故初動対応
15業務中10業務(約67%)は完全IT化で一元化可能。
現場対応が必須なのは2業務(約13%)のみ。
一元化を成立させる「IT3点セット」
15業務の約8割を一元化可能にするには、3つのITインフラが必須条件です。 どれか1つでも欠けると、現場は結局「拠点ごとに別管理」に戻ります。
REMOTE TENKO
IT点呼・遠隔点呼システム
点呼業務を拠点に縛られずに実施するための核。国交省認定の遠隔点呼・事業者間遠隔点呼対応システム(Cagou IT点呼/IT点呼キーパー/e点呼PRO)を導入すれば、1人の運行管理者が複数営業所のドライバーに点呼可能。
DIGITAL TACHO
デジタコ・ドラレコのクラウド連携
全車両の走行データ・速度・急操作・映像を1つのクラウド上で確認できる状態が必須。営業所ごとに紙ベースの日報をさばいている状態では一元化は不可能。リアルタイム性が運管の目と耳になる。
SHARED PLATFORM
営業所間の情報共有プラットフォーム
運転者台帳・指導教育履歴・健診記録・車両台帳・点呼記録を全拠点で共有・更新できる基盤。kintoneや自社開発システムで構築するケースが多い。ここが抜けると、結局「営業所ごとに別管理」になり一元化の意味が失われる。
「一元化できるかどうか」は人の能力の問題ではなく、
IT基盤が整っているかどうかに帰結する。
SCALE
規模別 一元化の現実度
一元化の実現可能性は、会社の規模によって変わります。 IT基盤さえ揃えれば「何拠点でも1人で管理できる」というわけではなく、 事故対応や健康確認のバッファを考えると、規模に応じたハイブリッド設計が現実解です。
SCALE 01
小規模
1〜2営業所・ドライバー〜30名
1人の運行管理者と補助者で全業務を一元化できる規模。IT点呼+デジタコクラウド+営業所間の情報共有さえあれば、管理者の拘束時間も大幅に短縮できる。最もIT一元化の恩恵が大きい。
SCALE 02
中規模
3〜5営業所・ドライバー30〜100名
点呼・運転者台帳・デジタコ確認は本部で一元管理し、事故初動・健康状態確認のために各営業所に運行管理補助者を配置。新生物流(拠点4・ドライバー52名)はまさにこのモデルで運用中。
SCALE 03
大規模
5営業所以上・ドライバー100名超
全社1箇所に集約すると点呼待ちの行列や事故対応のボトルネックが起きる。関東・関西・九州といったエリア単位で運行管理センターを設置し、エリア内は一元化するハイブリッド型が現実解。
新生物流は、一元化を「運用」と「支援」の両輪で進めています
当社は4拠点・ドライバー52名の運行管理をIT基盤で一元化して運用中。 その経験を元に、他社様の一元化導入も支援しています。
SERVICE 01
点呼BPO(SINSEI BPO)
平日20:00〜翌8:00の夜間帯を事業者間遠隔点呼で受託。 運行管理者の「眠れない夜」を解消し、一元化運用の中核となる時間帯をカバーします。
SERVICE 02
IT点呼システム販売
Cagou IT点呼/IT点呼キーパー/e点呼PROの3製品を取扱。 自社運用の知見を元に、一元化を前提とした製品選定と導入設計を支援します。
SERVICE 03
ITコンサルティング
運転者台帳・乗務記録・指導教育記録の一元管理基盤をkintone等で内製構築。 「営業所間の情報共有プラットフォーム」を実装レベルでご支援します。
OUR COMMITMENT
新生物流は「点呼を請け負う会社」ではなく、
運行管理の一元化を運用と支援の両面から進める運送会社です。
実証実験の結果を待つのではなく、今できる一元化から一歩ずつ進めていきませんか。
運行管理の一元化、まずは現状整理から始めませんか?
「15業務のうち、自社はどこまで一元化できるのか」 「どのITを揃えれば一元化が現実になるのか」—— 現場を知る運送会社として、自社運用と他社支援の両面からご提案します。 まずはヒアリングから。


